ロシアでは医師は調剤しない

皆様:

昨日、ロシアのモスクワ薬学会会長に宛てた通信の内容を皆様にも知っていただきたいと思い、転送で差し上げましたところ、 受信された方から質問の電話をいただきましたので、少し釈明させていただきます。

従来、先進国G7の中で、「医師の調剤」が認められている(不完全分業)のは、日本だけであることは確認されておりましたが、 最近はG7にロシアが加わり先進国G8が着目されるようになりましたので、ロシアで「医師の調剤」はどうなっているか、国際薬学 連合(FIP) 事務局長に尋ねたところ、ロシアはFIPに加盟していないので、直接モスクワ薬学会会長Roza Yagudina教授に尋 ねるようにと紹介して下さったので、同教授にメールを差し上げましたら、答えてくれたのであります。

その答えは、簡単に言えば、下記のように、「OTC, 処方薬どちらも薬局で調剤される」、「医薬品調剤は薬剤師(薬学教育 を受けた専門家)のみが行う」。 従って、ロシアは「医師の調剤」の行なわれない国(完全分業国)であり、結局「医師の調剤」 が認められている(不完全分業)のは、G8 の中で日本だけであることが確認されました。蛇足ながら、「医師の調剤」が認めら れていない先進国でも、薬局のない地区では、一時的に、特別の許可のもとに 医師の調剤を認める場合があります。しかし、 これは、日本の医師が、医師法22条・歯科医師法21条・薬剤師法19条の例外規定により、薬剤師と同等の薬剤師技能が あると見なされて調剤できるのと全く異なります。つまり、法律上「日本の薬剤師は医師が居れば要らない」のです。

何故先進国の中で、日本だけにこの様なことが起こったかというと、明治維新後1874年に欧米式の「医師の調剤」のない制 度が導入されましたが、15年後の1889年に長谷川泰医師の提案が国会で採択されて、「医師は自分の患者には薬剤師と 同様に調剤できる」制度に変わって125年続いているのです。これにより、日本の薬剤師の役割は、欧米式の処方せん鑑査中 心でなく、医薬品販売中心になりました。欧米先進国で、「薬剤師は市民から頼りにされる職業のNo.1」(Gallup調査)である のは、“市民は薬剤師が処方せんをチェックしてくれるから安心である”からだと言われております。日本でそのようなこと聞いたこ とがありません。

これを第2次大戦後、占領軍のマッカーサー元帥が、医師の調剤を撤廃して、欧米式に変えようとしましたが、成功しません でした。日本薬剤学会は。今こそ。薬学教育6年制の薬剤師が生まれたのであるから、先進国並みに、医師・薬剤師がそれ ぞれの身分法に基づき互いに侵されず独立した固有の専門職能、つまり「医師が処方し薬剤師が調剤する」役割を担って国 民に奉仕できるよう努めております。ご理解ご支援を切にお願い申し上げます。

永井恒司

公益財団法人永井記念薬学国際交流財団理事長

E-mail: nagai-t@mbc.ocn.ne.jp

  

公益社団法人日本薬剤学会名誉会長

NPO法人ジェネリック医薬品協議会理事長

日本薬学図書館協議会会長

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