永井先生の年頭訓示

国際薬学連合(FIP)が日本薬剤学会の「医師の調剤」廃止運動を支援

永井恒司  2019.12.08

FIPは、世界の300万の薬剤師・薬学研究者から成る各団体の頂点に存在する組織ですから、薬学の国連とも言えます。そのFIPが去る3月6日付けで、日本薬剤学会が従来進めて来た「医師の調剤」廃止(分業)の推進運動を支援する」ことを公表しました。

分業は、「医師は処方し(診察を含む)、薬剤師は調剤する(処方鑑査を含む)」という 医師・薬剤師の "在り方" 、つまり、「医師は調剤しない」ことです。一方、先進国で「医師が調剤できる」のは、唯一日本だけです。アジアでは、オーストラリアとニュージーランドのようにイギリスに起源のある国と、インドネシアのようにオランドの影響の強い国が「医師は調剤できない」部類です。

注目すべきは、隣の韓国が、自力で、2000年に完全分業を達成しています。その達成に当たり、特記すべきは、医師はストライキしたことに対し、一般市民が、薬剤師を支援したことが大きなパワーになったと聞いています。

よく言われることですが、日本の薬剤師は医師の従属者であるのに対し、欧米の薬剤師は医師と全く対等であると言われます。その所以は、欧米では、薬剤師の "処方鑑査が絶対" であることだろう、と言われています。とかく、日本人は、調剤を有形要素(投与薬調製)のみに目を向けがちですが、大事なのは、無形要素(処方鑑査)です。即ち、医師の診察が済んだ時もらう薬(投与薬)は、すべて、薬剤師の、徹底した、チェック(処方鑑査)、が必要だということです。そして、薬剤師がその投薬が不適当であることに気がついたとき、医師は指摘した薬剤師の主張を受け入れるのが普通です。その代わり、その見識が医師を納得されるに足るものでなければなりません。このことが医師・薬剤師対等の環境を形成し得るのです。

このような事情が薬剤師の地位を押し上げていると思われる例があります。多くの医師が、すんなり薬剤師の処方鑑査をパスできるよう、用心して、電話やFaxであらかじめ薬剤師(絶対に処方箋作成は許されない)のコンサルテーションを受けて作成した処方箋を、患者に渡して薬局へ行くことを指示するとのことです。従って、実質的処方作成者は薬局の薬剤師であり、全体の処方率は、数10%になるとのことです。そして、医師は薬剤師に頭があがらないことになります。

上記の、よく言われる「日本の薬剤師は医師の従属者」は、次に述べる任意分業に由来する、と考えられます。明治維新により、1874に欧米から導入された欧米型の分業は、僅か15年続いただけで、1889年に、薬剤師不足という非医学的・非薬学的理由で、現行の任意分業に移行することになりました。これは、医師法22条・歯科医師法21条・薬剤師法19条に例外規定を設け、本来薬剤師のみが行使できる調剤を、薬剤師免許を所持しない医師が行使できるように変えたのです。これで、医師は薬剤師固有の職能まで、支配可能になったのです。




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